強度設定

無酸素性作業閾値(AT)と乳酸閾値

持久力トレーニングの強度を決めるうえで、閾値の概念は欠かせません。どこから身体への負荷の質が変わるのかを理解しましょう。

レベル 入門〜実践監修 日原 裕太 NSCA-CPT

閾値とは何か

運動強度を徐々に上げていくと、ある強度を超えたあたりから血中乳酸が急に増え始めます。この変化が起こる強度の領域を、無酸素性作業閾値(AT)や乳酸閾値と呼びます。

閾値より低い強度では乳酸の産生と除去が釣り合い、比較的安定して運動を続けられます。閾値を超えると乳酸が蓄積しやすくなり、運動を長く続けることが難しくなっていきます。

AT付近で起こること

閾値付近では呼吸が深く速くなり、主観的なきつさも増していきます。これは増えた二酸化炭素を排出しようとする身体の反応であり、換気の指標から閾値を推定する方法にもつながります。

トレーニングへの応用

閾値の強度は、持久力トレーニングの目安として実用的です。閾値よりやや低い強度での長めの運動は持久的な基盤づくりに、閾値付近の強度は閾値そのものの引き上げに役立つとされます。

  • 閾値が高いほど、より速いペースを楽に維持しやすくなる
  • 閾値はVO2maxとは別の指標で、改善の余地が大きいことが多い
  • 目的に応じて閾値より下と上の運動を組み合わせる

現場での推定方法

厳密には血中乳酸の測定や呼気ガス分析が必要ですが、現場では会話できるかどうか(トークテスト)や主観的運動強度を目安にすることがあります。

閾値付近では会話が途切れがちになるため、簡易的な指標として活用できます。ただし個人差が大きいため、絶対視せず本人の感覚と合わせて判断します。

指導上の注意

閾値の概念は便利ですが、初心者にいきなり高強度を課す根拠にしてはいけません。まずは無理なく続けられる強度で基盤をつくり、段階的に負荷を高めることが安全です。

持病がある人や高齢者では、閾値付近の強度が過負荷になる場合があります。体調や症状を確認し、必要に応じて医療職と連携します。

医療免責

本記事は教育目的の学習コンテンツです。診断・治療行為を代替するものではありません。痛み・しびれ・急性外傷・発熱・進行性の症状や、医師から運動制限を受けている場合は、自己判断で進めず医師・国家資格者にご相談ください。

よくある質問

ATと乳酸閾値は同じものですか。

厳密には測定の着目点が異なりますが、いずれも乳酸が蓄積し始める運動強度の領域を指す近い概念として実務では扱われます。文脈に応じて使い分けられます。

閾値は専用機器がないとわかりませんか。

正確には測定機器が必要ですが、会話のしやすさや主観的なきつさを目安に大まかに推定できます。あくまで目安として、本人の感覚と併用するのが現実的です。

閾値を上げると何が良いのですか。

閾値が高いほど、より速いペースを楽な感覚で維持しやすくなります。マラソンなど持久系の運動では、閾値の向上がペース維持に直結しやすいとされます。

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