長期記憶

長期記憶のしくみとスキルの定着

長期記憶は経験や知識を長くとどめる仕組みです。種類によって覚え方も使われ方も異なり、運動スキルの定着を理解する鍵になります。

レベル 入門〜実践監修 日原 裕太 NSCA-CPT

宣言的記憶と非宣言的記憶

長期記憶は大きく、言葉で説明できる宣言的記憶と、言葉にしにくい非宣言的記憶に分けられます。宣言的記憶には出来事の記憶や知識の記憶が含まれ、非宣言的記憶には体で覚える手続き記憶が含まれます。

運動スキルの多くは手続き記憶として蓄えられます。自転車の乗り方を言葉で説明しにくくても体は覚えている、という現象がこれにあたります。

手続き記憶の特徴

手続き記憶は反復を通じて少しずつ形成され、いったん身につくと忘れにくいとされます。意識しなくても動作が出てくるため、自動化されたスキルの基盤になります。

形成には時間と繰り返しが必要で、近道はありません。指導では十分な反復の機会を確保し、正しい動きを繰り返すことが定着につながります。

符号化と検索

記憶は、情報を取り込む符号化、保持する貯蔵、思い出す検索の段階で捉えられます。覚えるときと思い出すときの状況が似ているほど検索しやすいことが知られています。

  • 練習環境を本番に近づけると、技能が発揮されやすい
  • 意味づけして覚えると、検索の手がかりが増える
  • 思い出す練習そのものが、記憶を強める

忘却と分散学習

学んだ内容は時間とともに思い出しにくくなりますが、適切な間隔で復習すると定着が高まります。一度に詰め込むより、間隔をあけて繰り返す分散学習のほうが長期の保持に有利とされています。

運動指導でも、短い練習を間隔をあけて重ねるほうが、長時間まとめて行うより身につきやすい場面があります。スケジュールに復習の機会を組み込むことが有効です。

指導に活かす視点

新しい知識は既に知っていることと結びつけると覚えやすくなります。動作の目的や意味を伝え、クライアント自身の言葉で説明してもらうことも記憶を深めます。

正しくない動きを繰り返すと、それも手続き記憶として定着してしまいます。初期段階での丁寧なフォーム確認は、後の修正コストを下げる意味でも重要です。

医療免責

本記事は教育目的の学習コンテンツです。診断・治療行為を代替するものではありません。痛み・しびれ・急性外傷・発熱・進行性の症状や、医師から運動制限を受けている場合は、自己判断で進めず医師・国家資格者にご相談ください。

よくある質問

一度覚えた運動スキルは忘れませんか。

手続き記憶は忘れにくいとされますが、まったく失われないわけではありません。長く使わないと精度は落ちるため、定期的な実施が望ましいです。

まとめて練習するのと分けて練習するのはどちらがよいですか。

長期の定着では、間隔をあけて繰り返す分散学習が有利とされる場面が多いです。目的や時間の制約に応じて組み合わせるとよいでしょう。

間違ったフォームも記憶されますか。

繰り返せば誤った動きも定着します。だからこそ初期に正しい動きを反復することが重要で、早めの修正が後の負担を減らします。

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