インストラクショナルデザイン
認知負荷理論|作業記憶の限界をふまえた設計
認知負荷理論は、人が一度に処理できる情報量の限界をふまえて教材を設計する考え方です。情報の出し方を工夫することで、学びやすさが大きく変わります。
認知負荷理論とは
認知負荷理論は、心理学者ジョン・スウェラーらによって提唱された、学習時の情報処理に関する理論です。新しい情報を扱う作業記憶には限りがあるという前提に立ちます。
一度に多くを詰め込むと処理が追いつかず、学習が妨げられます。情報量と提示のしかたを調整することが、わかりやすい教材の鍵になります。
3種類の認知負荷
認知負荷は、内容そのものの難しさ、設計の良し悪し、理解を深める働きの3つに分けて考えられます。
- 課題内在的負荷: 学ぶ内容そのものが持つ難しさ
- 課題外在的負荷: わかりにくい説明など設計上のムダな負荷
- 学習関連負荷: 理解や定着につながる望ましい負荷
ムダな負荷を減らす
外在的負荷は設計次第で減らせる部分です。情報の重複、関連する図と説明が離れている、注意があちこちに分散するといった状態は、理解を妨げます。
図と説明を近くに置く、必要な情報だけに絞る、専門用語をいきなり使わないなどの工夫で、ムダな負荷を下げられます。
内在的負荷を調整する
内容そのものの難しさは消せませんが、調整はできます。複雑な動作を要素に分け、簡単な部分から順に学ばせると、一度に扱う情報量を抑えられます。
- 複雑な動作を段階に分解して教える
- 前提となる基礎から順に積み上げる
- 初心者には情報を絞り、習熟に応じて増やす
運動指導への応用
新しい種目を教えるとき、フォームの注意点を一度に何個も伝えると、学習者は処理しきれません。1回に意識する点を絞り、できたら次を加える進め方が効果的です。
言葉での説明と実演を組み合わせ、見本と指示を同時に届けると、情報の統合がしやすくなります。
習熟度による違い
初心者に有効な丁寧な説明が、熟練者には逆に冗長な負荷になることがあります。学習者の習熟度に応じて、情報量や手厚さを変えることが大切です。
誰に教えるかによって最適な見せ方は変わる、という視点を持つと、教材の使い回しによる失敗を避けられます。
医療免責
本記事は教育目的の学習コンテンツです。診断・治療行為を代替するものではありません。痛み・しびれ・急性外傷・発熱・進行性の症状や、医師から運動制限を受けている場合は、自己判断で進めず医師・国家資格者にご相談ください。
よくある質問
認知負荷理論を一言でいうと何ですか。
人が一度に処理できる情報量には限りがあるため、その範囲に収まるよう情報の量と見せ方を設計するという考え方です。
フォーム指導でのコツはありますか。
注意点を一度に多く伝えず、1〜2点に絞って習得させ、できたら次を加えます。実演と短い言葉を組み合わせると理解しやすくなります。
情報は少ないほど良いのですか。
理解を深める負荷は必要です。減らすべきはわかりにくい説明などムダな負荷で、考えさせる適度な負荷はむしろ学習を促します。
cortis Trainer Academy
学びを、現場で使える知識に。
基礎から評価・運動療法・医療連携まで。身体を診る専門職のための継続学習アカデミー。基礎は登録不要・無料。