学習理論

認知主義の学習理論と情報処理

認知主義は、学習を頭の中での情報処理として捉えます。注意・記憶・既有知識の働きを理解すると、伝え方や練習の組み立て方を改善できます。

レベル 入門〜実践監修 日原 裕太 NSCA-CPT

認知主義とは何か

認知主義は、行動主義が扱わなかった頭の中の働きに注目し、学習を情報を取り入れ、処理し、蓄え、引き出す過程として説明する立場です。理解や問題解決、知識の構造化といった内的な活動を重視します。

指導者にとっては、相手がどう情報を受け取り、何と結びつけて理解しているかを考える視点を与えてくれます。

情報処理モデルの基本

情報処理モデルでは、外界からの情報がまず感覚に入り、注意を向けられたものが短期記憶へ送られ、意味づけや反復を経て長期記憶に保存されると考えます。各段階のどこでつまずくかを見極めると対策が立てやすくなります。

  • 感覚記憶 ごく短時間だけ保持される入り口
  • 短期記憶 一度に扱える量が限られた作業領域
  • 長期記憶 知識や技能が長く蓄えられる貯蔵庫
  • 符号化 情報を覚えやすい形に変換する過程

ワーキングメモリと負荷への配慮

一度に意識して処理できる情報の量には限りがあります。新しい動作を教えるときに注意点を一度に多く伝えると、相手は処理しきれず混乱しやすくなります。

要点を絞り、段階的に積み上げること、複雑な動きを意味のあるまとまりに分けて伝えることが、過剰な負荷を避ける工夫になります。

スキーマと既有知識の活用

人は新しい情報を、すでに持っている知識の枠組みと結びつけて理解します。この枠組みをスキーマと呼びます。既有知識と関連づけられた情報は記憶に残りやすくなります。

運動指導では、相手がすでに知っている動きや日常動作にたとえて説明すると理解が早まります。たとえば椅子から立つ動きとスクワットを結びつけると、新しい種目も身近に感じられます。

記憶に定着させる工夫

情報をただ繰り返すより、自分の言葉で言い換えたり、意味を考えながら覚えたりするほうが長期記憶に残りやすいことが知られています。指導では、相手に動作のポイントを言葉で説明してもらう機会をつくると効果的です。

また、一度に詰め込むより間隔をあけて繰り返すほうが定着しやすい傾向があります。学んだ内容を次回の冒頭で短く確認する習慣が、知識と技能の定着を助けます。

医療免責

本記事は教育目的の学習コンテンツです。診断・治療行為を代替するものではありません。痛み・しびれ・急性外傷・発熱・進行性の症状や、医師から運動制限を受けている場合は、自己判断で進めず医師・国家資格者にご相談ください。

よくある質問

一度にたくさん教えてはいけないのですか。

一度に処理できる情報量には限りがあるため、注意点を多く並べると相手は処理しきれません。要点を二つか三つに絞り、できてきたら次の点を加えるほうが結果的に早く身につきます。

たとえ話を使うのはなぜ有効なのですか。

人は新しい情報をすでに知っている枠組みと結びつけて理解します。日常動作や馴染みのある動きにたとえると、既有知識と関連づけられ、理解と記憶がともに進みやすくなります。

覚えたことをすぐ忘れさせないコツはありますか。

間隔をあけて繰り返すこと、自分の言葉で言い換えてもらうことが定着に役立ちます。次回の冒頭で前回の要点を短く確認するだけでも記憶の保持が高まります。

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