エネルギー代謝




運動生理学

エネルギー代謝

人体がATPを産生する3つのエネルギー供給系と、運動強度に応じた基質利用の変化を解説します。

ATPとは

アデノシン三リン酸(ATP)は、筋収縮をはじめとするあらゆる生体活動のエネルギー通貨です。体内に貯蔵されるATPはごくわずか(約80〜100g)で、運動時には即座に再合成される必要があります。

3つのエネルギー供給系

ATP-CP系(ホスファゲン系)

持続時間:約10〜15秒
出力:最大(最も高い)
特徴:酸素不要。クレアチンリン酸の分解によりATPを即座に再合成。短距離ダッシュや重量挙げの1RMで主に使用。回復には2〜3分必要。

解糖系

持続時間:約30秒〜2分
出力:高い
速い解糖:ピルビン酸→乳酸に変換。酸素不要で素早くATP産生(1グルコースあたり2ATP)。
遅い解糖:ピルビン酸→アセチルCoAとしてミトコンドリアへ。酸素あり条件で効率的。

酸化系(有酸素系)

持続時間:2分以上〜無制限
出力:低い(最も持続的)
特徴:ミトコンドリア内でクレブス回路→電子伝達系を経てATP産生。1グルコースあたり約36〜38ATP。脂肪酸のβ酸化も利用可能。

クロスオーバーコンセプト

低強度運動では脂質が主なエネルギー源ですが、運動強度が上がるにつれて糖質の利用割合が増加します。この脂質と糖質の利用比率が逆転する現象をクロスオーバーコンセプトと呼びます。交差点はおよそ運動強度65%VO2max付近です。

RER値と基質利用率

RER(呼吸交換比)= CO2排出量 ÷ O2摂取量

RER値 主な基質 糖質利用率 脂質利用率
0.70 脂質100% 0% 100%
0.80 脂質優位 33% 67%
0.85 混合 50% 50%
0.90 糖質優位 67% 33%
1.00 糖質100% 100% 0%

実践への応用

脂肪燃焼を目的とする場合は中強度(40〜65%VO2max)の持続運動が効果的です。一方、HIIT(高強度インターバルトレーニング)はEPOC(運動後過剰酸素消費)により総消費カロリーを増大させます。

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📚 参考文献・推奨エビデンス

  1. McArdle WD et al.. (2023). Exercise Physiology: Nutrition, Energy, and Human Performance, 9th Edition. Lippincott.
  2. ACSM. (2021). ACSM’s Guidelines for Exercise Testing and Prescription, 11th Edition. Wolters Kluwer.
  3. Kenney WL et al.. (2022). Physiology of Sport and Exercise, 7th Edition. Human Kinetics.

📋 この章の学習確認チェックリスト

以下の全項目を達成できたら、この章の習得完了です。

  • □ エネルギー代謝システム(ATP-PC・解糖・有酸素)を区別できる
  • □ 運動強度と使用するエネルギー基質の関係を説明できる
  • □ この生理学的メカニズムをクライアントに平易に説明できる
  • □ トレーニング適応の主要なメカニズムを述べられる
  • □ 数値(VO2max・心拍数など)を用いて強度を設定できる
  • □ この単元の内容をプログラム設計に反映できる

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