運動生理学 完全ガイド

— Learning Info / この記事の学習情報
学習領域cortis Academy 学習プラットフォーム
対象トレーナー / 理学療法士 / 医師 / スポーツ指導者
関連資格NSCA-CPT / NESTA-PFT / JATI-ATI
著者cortis Academy 編集部
監修日原 裕太(NSCA-CPT)
最終更新日2026/05/05

免責:本記事は教育目的の学習コンテンツです。診断・治療を代替するものではありません。

読了 約 5分文字数 約 2,582字

📘 このページで学べること:VO2max・乳酸閾値・心拍応答など運動生理学の全領域を完全網羅した詳細ガイドです。NSCA-CSCSレベルの深い生理学的知識を段階的に習得できます。

Basic Science

運動生理学 完全ガイド

エネルギー代謝から心肺機能まで、トレーナーに必須の運動生理学を体系的に学ぶ。

1. エネルギー代謝の3つのシステム

すべての身体活動はATP(アデノシン三リン酸)をエネルギー源として行われます。ATPの再合成経路は運動強度と持続時間によって使い分けられます。
エネルギー系 持続時間 強度 ATP生成速度 酸素 代表的運動
ATP-PCr系 ~10秒 最大 最速 不要 100m走、投てき
解糖系 10秒~2分 速い 不要 400m走、格闘技
酸化系 2分以上 低~中 遅い 必要 マラソン、水泳

ATP-PCr系(リン酸系)

筋肉内に貯蔵されたクレアチンリン酸(PCr)からATPを即座に再合成します。反応速度が最も速いため、全力運動の最初の8〜10秒間に主に利用されます。

反応式:PCr + ADP → ATP + Cr(クレアチンキナーゼ触媒)

解糖系(嫌気的代謝)

グルコース(血糖)または筋グリコーゲンを分解してATPを生成します。酸素不要で比較的速くATPを供給しますが、副産物として乳酸が蓄積します。

ATP収量:グルコース1分子→正味2ATP(グリコーゲンから→3ATP)

酸化系(好気的代謝)

ミトコンドリア内で糖質・脂質・タンパク質を完全に酸化分解します。ATP生成量が最大(グルコース1分子→36〜38ATP)ですが、反応速度は遅い。

クロスオーバーコンセプト:運動強度が上がるにつれ、脂質から糖質へとエネルギー基質の利用比率が変化します。約65% VO2maxが脂質燃焼の最大点とされます。

2. 筋収縮のメカニズム

筋の構造階層

レベル 構造 説明
筋全体 筋外膜に包まれた筋束の集合体 大胸筋、大腿四頭筋など
筋束 筋周膜に包まれた筋線維の束 数十〜数百本の筋線維
筋線維 筋内膜に包まれた1本の細胞 多核細胞、直径10〜100μm
筋原線維 筋線維内の収縮要素 アクチン・ミオシンフィラメント
サルコメア 筋収縮の最小機能単位 Z線〜Z線の区間

滑走説(Sliding Filament Theory)

1954年にHuxleyらが提唱。筋収縮はアクチンとミオシンフィラメントが互いに滑り込むことで起こります。

興奮-収縮連関の流れ:
①運動神経からのインパルス→②神経筋接合部でACh放出→③筋細胞膜の脱分極→④T管を通じてCa²⁺放出→⑤トロポニンにCa²⁺結合→⑥ミオシン頭部がアクチンに結合→⑦クロスブリッジサイクル→⑧ATP分解とフィラメント滑走→⑨筋収縮

筋線維タイプの比較

特性 タイプI(遅筋) タイプIIa(速筋・酸化型) タイプIIx(速筋・解糖型)
収縮速度 遅い 速い 最速
疲労耐性 高い 中程度 低い
ミトコンドリア 多い 多い 少ない
ミオグロビン 多い(赤筋) 中程度 少ない(白筋)
主なエネルギー系 酸化系 酸化系+解糖系 解糖系
代表的活動 姿勢維持、マラソン 中距離走 スプリント、ジャンプ

3. 心肺機能と運動

心臓の運動適応

有酸素トレーニング適応

  • 左心室容積の増大(遠心性肥大)
  • 一回拍出量の増加
  • 安静時心拍数の低下(徐脈化)
  • 最大心拍出量の増加
  • 毛細血管密度の増加

レジスタンストレーニング適応

  • 左心室壁厚の増大(求心性肥大)
  • 収縮期血圧の一過性上昇
  • 末梢血管抵抗の増大
  • 一回拍出量への影響は限定的

最大酸素摂取量(VO2max)

VO2maxは全身持久力の最も信頼性の高い指標で、心肺機能・血液の酸素運搬能力・筋の酸素利用能力の総合評価です。

フィックの式:VO2 = 心拍出量 × 動静脈酸素較差 = (HR × SV) × (a-vO2diff)
トレーニングにより心拍出量と動静脈酸素較差の両方が向上し、VO2maxが増加します。

換気閾値(VT)と乳酸閾値(LT)

運動強度の増加に伴い、ある時点で換気量が急増(VT)し、血中乳酸が急激に上昇(LT)します。これらの閾値はトレーニング強度の指標として利用されます。

4. 内分泌系と運動

ホルモン 分泌部位 運動時の役割
テストステロン 精巣/副腎 筋タンパク質合成促進、筋肥大
成長ホルモン 下垂体前葉 脂肪分解促進、タンパク質合成
コルチゾール 副腎皮質 糖新生、タンパク質分解(異化)
インスリン 膵臓β細胞 グルコース取り込み促進
アドレナリン 副腎髄質 心拍数増加、グリコーゲン分解
IGF-1 肝臓/筋 筋肥大シグナル(mTOR経路)
テストステロン/コルチゾール比(T/C比):同化と異化のバランスの指標。T/C比の低下はオーバートレーニングの兆候とされます。

🎓 理解度チェック

運動生理学の知識をNSCA-CPT練習問題で確認しましょう。

NSCA-CPT 問題集へ →

✅ 学習チェックリスト

  • ATP産生の3つのシステム(リン酸系・解糖系・有酸素系)を説明できる
  • VO2max・乳酸閾値(LT1/LT2)の測定原理と応用を理解している
  • 心拍出量・一回拍出量・動静脈酸素較差を説明できる
  • 持久トレーニングによる心肺適応(中枢・末梢)を具体的に説明できる
  • 環境(高地・暑熱・寒冷)が生理学的応答に与える影響を理解している

次にやること

この記事で学んだ内容を、問題演習・関連トピック・ロードマップ・ケーススタディで定着させましょう。

更新履歴

  • 2026/05/05最終更新(学習メタ情報・参考文献ポリシー追加)
  • 2026/05/05初版公開

最新の研究動向・診療ガイドラインの更新に応じて、定期的にコンテンツを見直しています。

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