運動処方の基礎 Ch.1 FITT原則・強度・頻度・期間

運動処方の基礎 Ch.1

Exercise Prescription Basics FITT原則・強度・頻度・期間

1. FITT原則による運動処方設計

安全で効果的な運動処方は、FITT原則(Frequency周波数・Intensity強度・Time時間・Type種類)に基づく。医学的根拠に基づく運動処方が、怪我リスク最小化と最大効果の両立を実現。曖昧な「毎日運動しましょう」では効果が限定的。科学的な運動処方が必須。

1.1 強度(Intensity)の決定

運動強度は相対的強度(最大値に対する割合)で表示される。有酸素トレーニングはVO2 max %またはHRmax(最大心拍数の%)で設定。米国心臓協会ASAは、健康成人に週150分の中等度有酸素運動(HRmax 50~70%)を推奨。

レジスタンストレーニングでは1-RM(1回の最大挙上重量)に対する%で設定。筋肥大は1-RM 65~85%、筋力は85~95%、筋持久力は~50%が目安。個人の体力水準に応じた相対強度の正確な把握が、安全性と効果を決定。

1.2 頻度(Frequency)と期間(Time)

有酸素トレーニングは週3~5日、1回20~60分が目安。初心者は週3日から開始し、適応に応じて増加。レジスタンストレーニングは週2~3日、同一筋群は週2日以上の間隔をおく必要がある。過度な頻度は中枢神経疲労とオーバートレーニングを引き起こす。

適応期間は4~6週間。6週間毎に刺激の変化(種目変更・強度調整・セット数変更)が必須。同じプログラムを8週間以上継続するとプラトー(適応の停止)が起こり、進度が停止する。計画的な刺激変化が、継続的な進度を保証。

1.3 種類(Type)の選択と個別化

運動の種類は目標と個人の好みにより選択。健康維持なら複合的な有酸素・レジスタンス・柔軟性運動の組み合わせが最適。競技パフォーマンス向上なら、競技動作に特異的なトレーニング。個人の運動好みに合致した種類でなければ継続率が低下。

医学的リスク評価と運動処方

冠状動脈疾患、高血圧、糖尿病などの既往歴がある場合、医師の許可と運動耐容能テストが必須。安全でない強度での処方は、深刻な心事故を引き起こす。トレーナーの責任は、医学的リスク評価を正確に行い、必要に応じて医師へリファラルすること。

2. 適応と進度管理

2.1 耐性(Tolerance)と適応の限界

初期の3~4週間は急速に適応が起こり、VO2maxは5~10%向上可能。その後は適応速度が鈍化し、10週目以降は1~2%の向上に留まる。年単位でのプログラム実施でも、最大40~50%の適応に上限がある。生物学的な適応の限界を理解することが、現実的なゴール設定につながる。

2.2 脱トレーニング(Detraining)への対策

運動停止後2~3週間でVO2maxが5~10%低下。4週間の停止で15~20%の低下も報告されている。完全な停止は避け、軽めの運動継続(通常の40~50%の強度)で、適応の50~60%を維持可能。リハビリ期間中でも軽運動継続が、復帰後の復路を大幅に短縮。

FITT原則の実践例

  • Frequency:週3~5日の定期的運動
  • Intensity:相対強度(HRmax % or 1-RM %)で設定
  • Time:有酸素30~60分、レジスタンス45~90分
  • Type:個人の好み・目標に合致した運動種
  • 期間:4~6週毎に刺激変化で適応継続

📝 確認テスト|運動処方の基礎 Ch.1:FITT・強度設定・特殊集団

全5問・正解はすぐに表示されます

Q1. ACSMが推奨する成人の心肺持久力(有酸素運動)の推奨ガイドラインとして正しいものはどれか?

不正解。週3×10分・低強度では健康維持に不十分とされています(最低150分/週の中等度、または75分/週の高強度)。

正解!ACSMの最新ガイドライン(2021)では、成人の有酸素運動目標は「中等度150〜300分/週 or 高強度75〜150分/週、またはその同等の組み合わせ」です。さらに週2〜3回の筋力トレーニングも推奨されます。

不正解。90〜100% HRmaxは最大強度であり、毎日の実施は回復不足を招きます。

不正解。1万歩目標は健康促進の目安の一つですが、ACSM公式推奨の代替基準ではありません。

Q2. 「心拍予備量法(HRR法 / Karvonen法)」を用いた目標心拍数の計算式として正しいものはどれか?

不正解。それは最大心拍数法(%HRmax法)で、Karvonen法ではありません。

正解!Karvonen式:目標HR = HRrest + (HRmax – HRrest) × 強度%。HRR(Heart Rate Reserve)は「最大HR – 安静時HR」で、VO2Rと相関が高く、%HRmax法より個人差を反映しやすいです。

不正解。220-年齢は最大心拍数の推定式(HRmax推定)であり、目標HR計算式ではありません。

不正解。体重は心拍数算出に用いません。

Q3. 「METs(代謝当量)」の定義として正しいものはどれか?

不正解。METsはVO2maxではなく安静時代謝を基準にします。

正解!1 MET ≈ 3.5 mL O2/kg/分(安静座位)。2 METs = 普通歩行、6 METs = ジョギング、10 METs = 激しいスポーツ。METs値に体重・時間を掛けてエネルギー消費量(kcal)が概算できます。

不正解。それは心拍予備量(HRR)に関連する概念です。

不正解。%MVCは筋力強度の表現で、METsとは別の概念です。

Q4. 2型糖尿病患者への運動処方で最も重要な注意点はどれか?

不正解。レジスタンストレーニングはインスリン感受性改善に効果的で、むしろ推奨されます。

正解!2型糖尿病への運動処方では①運動前後の血糖チェック(100〜250 mg/dL が安全域)、②低血糖症状(発汗・動悸・意識混濁)の事前教育、③SU薬/インスリン使用者への補食・医師との連携、④末梢神経障害による足のケア指導が必須です。

不正解。中等度有酸素運動(150分/週)+レジスタンストレーニングの組み合わせが推奨されます。

不正解。水中運動(水中歩行・水泳)は関節への負担が少なく2型糖尿病に適した種目の一つです。

Q5. 「運動処方の原則」における「段階的進行(Progression)」の判断基準として最も適切なものはどれか?

不正解。毎週5%増量のような一律の進行は、個人差・疲労蓄積・適応速度を無視しており非推奨です。

正解!適切なプログレッションは「適応の確認後に次ステップへ」が原則です。RPEの低下、反復回数の増加、技術の安定化が適応サインです。週5〜10%以内の増量が安全な目安とされています。

不正解。体重変化はプログレッションの主判断基準ではありません。

不正解。主観的意欲だけを根拠に進行すると過剰負荷・オーバートレーニングのリスクがあります。

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