必須アミノ酸・BCAAの代謝経路とmTOR経由の筋タンパク合成(MPS)を理解し処方に活用できる
📋 前提 タンパク質基礎・mTOR
- 1. アミノ酸の分類
- 2. BCAAの特殊性
- 3. 筋タンパク合成(MPS)のシグナル
- 4. 運動後プロテインウィンドウ
- 5. アミノ酸の異化とエネルギー
- 6. 易しい比喩
- 7. 章末問題
1. アミノ酸の分類
| 分類 | 数 | 例 |
|---|---|---|
| 必須アミノ酸(EAA) | 9種 | ロイシン・イソロイシン・バリン・リジン等 |
| 条件付き必須 | 6-8種 | グルタミン・アルギニン(ストレス下で不足) |
| 非必須 | 11種 | グリシン・アラニン・アスパラギン酸等 |
2. BCAAの特殊性
BCAA(バリン・ロイシン・イソロイシン)は肝臓での初回通過代謝をスキップして骨格筋で直接代謝される唯一のEAA群。ロイシン(分岐鎖中最重要): mTORC1を直接活性化→タンパク合成↑。血中BCAA↑→セロトニン前駆体トリプトファンと競合→中枢疲労軽減(論争中)[1]。
3. 筋タンパク合成(MPS)のシグナル
mTORC1(mechanistic target of rapamycin complex 1)が筋肥大の中枢スイッチ[2]。活性化因子: ①ロイシン・EAA(栄養シグナル)、②インスリン/IGF-1(ホルモン)、③機械的張力(運動)。mTORC1→S6K1・4EBP1のリン酸化→リボソームでのタンパク翻訳開始↑。阻害因子: AMPK(エネルギー枯渇時)、コルチゾール高値。
4. 運動後プロテインウィンドウ
抵抗運動後のMPS感受性は24-48時間持続するが、運動後0-2時間がmTORC1感受性最高。推奨: 0.25-0.4g/kg(体重70kgなら18-28g)の高品質タンパク(ロイシン3g以上含む)[3]。食品例: ホエイプロテイン(吸収が最速・ロイシン豊富)・鶏むね150g・ギリシャヨーグルト200g。
5. アミノ酸の異化とエネルギー
- 過剰タンパク: アミノ基転移→アンモニア(尿素回路で尿素に変換)→炭素骨格はTCAへ
- 糖原性アミノ酸(大多数): ピルビン酸・TCA中間体→糖新生
- ケト原性アミノ酸(ロイシン等): アセチルCoA→ケトン体・脂肪酸合成
- 絶食・低糖質時: 筋タンパクが糖新生の基質に→筋損失
6. 易しい比喩
mTORC1は「工場の開始ボタン」。ロイシン(鍵)がないとボタンが押せない。ロイシンだけあっても機械(リボソーム)が電力不足(AMPK活性)だと動かない。運動(電力確保)+ロイシン豊富なタンパク(鍵)の組み合わせで工場フル稼働(筋肥大最大化)。
7. 章末問題
- BCAAが肝臓をスキップして筋で代謝される意義
- mTORC1を活性化する3つの因子
- 運動後の推奨タンパク摂取量(体重kg当たり)
- ロイシン含有量が高い食品3種
- カロリー不足時に筋タンパクが分解される機序
EAA9種のうちロイシンがmTORC1の直接活性化因子。運動後2時間以内に0.25-0.4g/kgのホエイが筋肥大を最大化。BCAAは肝臓スキップで即効性がある。
EAA9種+BCAA3種+mTORC1活性化3因子+運動後タンパクウィンドウを覚える歌
📚 参考文献
- Norton LE, Layman DK. J Nutr. 2006;136(2):533S-537S
- Philp A et al. Appl Physiol Nutr Metab. 2011;36(1):65-72
- Moore DR et al. Am J Clin Nutr. 2009;89(1):161-168
📚 参考文献・推奨エビデンス
- Thomas DT et al.. (2016). American College of Sports Medicine Joint Position Statement: Nutrition and Athletic Performance. Med Sci Sports Exerc. DOI
- Phillips SM & Van Loon LJC. (2011). Dietary protein for athletes: From requirements to optimum adaptation. J Sports Sci. DOI
- Stanhope KL. (2016). Sugar consumption, metabolic disease and obesity. Crit Rev Clin Lab Sci. DOI
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