行動科学

トランスセオレティカルモデル(変化ステージモデル)を理解する

人の行動変容は一度に起こるのではなく、いくつかの段階を経て進みます。各ステージに合わせた支援を考える枠組みを学びます。

レベル 入門〜実践監修 日原 裕太 NSCA-CPT

トランスセオレティカルモデルとは

トランスセオレティカルモデルは、人が行動を変えていく過程を段階としてとらえる行動変容の理論です。禁煙研究を出発点に発展し、運動・食事・飲酒など幅広い健康行動に応用されてきました。

このモデルの特徴は、行動変容を全か無かではなく、連続したプロセスとして見る点にあります。同じ目標を持つ人でも、いま立っている段階が違えば必要な支援も変わると考えます。

5つの変化ステージ

代表的なモデルでは、行動変容を5つの段階に整理します。クライアントがどの段階にいるかを見立てることが、指導の出発点になります。

  • 前熟考期: 当面行動を変える意図がない段階
  • 熟考期: 変えたい気持ちはあるが踏み出せていない段階
  • 準備期: 近いうちに行動を始める準備をしている段階
  • 実行期: 新しい行動を始めて間もない段階
  • 維持期: 新しい行動が定着し継続している段階

変容プロセスとセルフエフィカシー

このモデルでは、段階を進めるために働く心理的・行動的な手続きを変容プロセスと呼びます。意識を高める、環境を整える、行動を置き換えるといった働きかけが含まれます。

また、自分はその行動を実行できるという感覚であるセルフエフィカシーが、段階が進むほど高まりやすいとされます。誘惑への対処の手応えを少しずつ積み上げることが鍵になります。

ステージに応じた支援の考え方

前熟考期や熟考期では、情報提供や気づきの促しが中心になります。いきなり具体的な運動メニューを渡すより、本人の関心や迷いに耳を傾ける姿勢が役立ちます。

準備期から実行期では、具体的な計画づくりや小さな成功体験の設計が有効です。維持期では、再発を想定した対処や継続のための環境調整に重点を置きます。

現場で活かすときの注意点

段階は一方向に進むとは限らず、後戻りも自然な現象として起こります。後戻りを失敗ととらえず、学びの機会として扱う視点が継続支援では重要です。

  • 本人の段階を決めつけず対話の中で見立てる
  • 段階を飛ばして高度な課題を課さない
  • 後戻りを責めず再開のハードルを下げる

他職種・医療連携での位置づけ

運動指導者は心理療法の専門家ではないため、強い心理的苦痛や治療を要する状態が疑われる場合は、医師や心理職への連携を検討します。このモデルはあくまで関わり方を整理する枠組みとして用います。

医療免責

本記事は教育目的の学習コンテンツです。診断・治療行為を代替するものではありません。痛み・しびれ・急性外傷・発熱・進行性の症状や、医師から運動制限を受けている場合は、自己判断で進めず医師・国家資格者にご相談ください。

よくある質問

変化ステージは必ず順番通りに進みますか

必ずしも順番通りではありません。後戻りや行きつ戻りつも自然に起こるため、現在の段階を都度見立てて支援を調整します。

どの段階かはどう判断しますか

行動を変える意図の有無や、すでに行動を始めているかを対話や簡単な質問で確認します。決めつけず本人の言葉から見立てます。

前熟考期の人にいきなり運動を勧めてよいですか

強く勧めると反発を招きやすい段階です。まずは関心や情報への反応を見ながら、気づきを促す関わりが向いています。

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