関節系 Ch.2:肩・肘・手首・股関節の詳細解剖

肩関節の解剖図
図:肩関節(GH関節)の構造(Wikimedia Commons / Public Domain)

1. 肩関節複合体(Shoulder Complex)

肩関節は4つの関節(GH・AC・SC・肩甲胸郭関節)が協調して機能する複合体です。180°の挙上可動域は人体で最大であり、その分安定性が犠牲になっています。

肩甲上腕リズム(Scapulohumeral Rhythm)

  • 肩挙上における上腕骨挙上:肩甲骨上方回旋 = 2:1
  • 180°挙上時:GH関節120°+肩甲骨上方回旋60°
  • このリズムが乱れると肩峰下スペースが狭小化 → インピンジメント

GH関節(肩甲上腕関節)の特徴

項目 内容
関節型 球関節(最大自由度・3軸)
関節窩の傾斜 5〜10°前傾・5°上方傾斜(安定性低い)
関節窩蓋(Labrum) 関節窩を50〜70%拡大し深さを2倍に。SLAP損傷の好発部位
静的安定機構 関節包・関節上腕靭帯(SGHL/MGHL/IGHL)・陰圧
動的安定機構 ローテーターカフ(圧迫力)・上腕二頭筋長頭腱

肩関節の正常可動域(NSCA基準)

運動方向 正常ROM 制限時の主な原因
屈曲 180° 後部関節包拘縮・小円筋短縮
伸展 60° 前部関節包拘縮
外転 180° 棘上筋腱板損傷・インピンジメント
内旋(90°外転位) 70° 後部関節包拘縮(投球側に多い)
外旋(90°外転位) 90° 前部関節包拘縮・肩甲下筋短縮
水平内転 130° 後部カプセル拘縮(クロスボディテスト陽性)

2. 肘関節

肘関節は腕尺関節・腕橈関節・近位橈尺関節の3関節複合体です。

関節 構成骨 主な動き
腕尺関節(Humeroulnar) 上腕骨滑車〜尺骨滑車切痕 屈曲・伸展(蝶番関節)0〜145°
腕橈関節(Humeroradial) 上腕骨小頭〜橈骨頭窩 屈曲・伸展・回内外
近位橈尺関節(Proximal RU) 橈骨頭〜尺骨橈骨切痕 前腕回内(85°)・回外(90°)

肘内側側副靭帯(UCL)と投球障害

  • UCL(尺側側副靭帯)は投球時の外反ストレスを主に支持
  • 野球肘(UCL損傷)の修復手術:Tommy John手術(UCL再建)
  • 内側上顆炎(ゴルフ肘):前腕屈筋群の過使用による腱症
  • 外側上顆炎(テニス肘):ECRB(短橈側手根伸筋)の腱症。Cozen test陽性

3. 手関節・手部

関節 正常ROM 重要靭帯・構造
橈骨手根関節(屈曲) 80° 橈側・尺側側副靭帯
橈骨手根関節(伸展) 70° 掌側橈骨手根靭帯(安定性の主役)
橈骨手根関節(橈屈) 20° 三角線維軟骨複合体(TFCC)
橈骨手根関節(尺屈) 30° TFCC:尺側の主要安定構造

手根管症候群:正中神経が手根管内で圧迫。母指〜環指橈側の痺れ・夜間増悪。Phalen test・Tinel sign陽性。

4. 股関節(詳細)

股関節は球関節で、体重支持と大きな可動性を両立する構造を持ちます。

方向 正常ROM 制限時の筋
屈曲(膝屈曲位) 120° 大殿筋・ハムストリングス
屈曲(膝伸展位) 90° ハムストリングス(SLR制限)
伸展 20〜30° 腸腰筋・大腿直筋(Thomas test)
外転 45° 内転筋群(短内転筋・長内転筋・大内転筋)
内転 30° 中殿筋・大腿筋膜張筋
外旋 45° 深層内旋筋群
内旋 35° 深層外旋筋群・梨状筋

Thomas Test(トーマステスト)

  • 目的:腸腰筋・大腿直筋・TFLの短縮評価
  • 陽性:仰臥位で片膝を胸に抱えた際に対側股関節が屈曲するまたは膝が伸展 → 腸腰筋/大腿直筋短縮
  • 重要性:長時間座位生活者・スクワット深さ制限のクライアント評価に必須

股関節インピンジメント(FAI:Femoroacetabular Impingement)

  • Cam型:大腿骨頭-頚部接合部の骨隆起 → 屈曲内旋でインピンジ
  • Pincer型:寛骨臼の過被覆 → 屈曲時に臼蓋縁が大腿骨頚部に衝突
  • 症状:鼠径部痛・スクワット・自転車での痛み
  • スクリーニング:FABER test・FADIR test(屈曲内転内旋で鼠径部痛→陽性)

5. 理解度チェッククイズ(5問)

Q1. 肩甲上腕リズムにおける上腕骨挙上:肩甲骨上方回旋の比はどれか?

✅ 正解:2:1

解説:180°の肩挙上ではGH関節120°+肩甲骨上方回旋60°の比率が基本です。このリズムの乱れ(肩甲骨運動障害)はインピンジメントや腱板損傷の素因となります。

Q2. テニス肘(外側上顆炎)で損傷しやすい腱はどれか?

✅ 正解:短橈側手根伸筋(ECRB)腱

解説:外側上顆炎の約80%はECRBの起始腱での腱症です。Cozenテスト(前腕回外・手関節伸展に抵抗)が陽性になります。反復する手首伸展動作(バックハンド・PCタイピング)が誘因となります。

Q3. Thomas testで対側股関節が屈曲する場合、短縮が疑われる筋はどれか?

✅ 正解:腸腰筋(腸骨筋+大腰筋)および大腿直筋

解説:Thomas testは仰臥位で片側股関節を最大屈曲した際に対側股関節の屈曲角度を評価します。股屈曲が起これば腸腰筋短縮、さらに膝が伸展に向かえば大腿直筋短縮を示唆します。

Q4. 手根管症候群で圧迫される神経はどれか?

✅ 正解:正中神経(Median Nerve)

解説:手根管内を通過する正中神経が横手根靭帯により圧迫されます。母指・示指・中指・環指橈側の痺れと夜間増悪が特徴です。Phalen test(手関節掌屈保持1分)とTinel sign(手根管叩打)が診断補助に使われます。

Q5. FAI(大腿寛骨臼インピンジメント)のスクリーニングテストとして正しい組み合わせはどれか?

✅ 正解:FABERテスト(屈曲・外転・外旋)とFADIRテスト(屈曲・内転・内旋)

解説:FADIRテストでは仰臥位で股関節90°屈曲→内転→内旋を加えた際の鼠径部痛がCam/Pincer型FAIの陽性所見です。感度90%以上と報告されています。

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