機能解剖学 Ch.1

機能解剖学 Ch.1

Functional Anatomy 動作パターン・チェーン理論・代償運動・アライメント【評価・改善プロトコル】

1. キネティックチェーン(Kinetic Chain)理論

1.1 下行型チェーン vs 上行型チェーン

運動は単一関節ではなく、関節の「鎖」で実現される。上下いずれからの障害も、遠位部位に影響。

チェーンタイプ 起点 障害時の代償 改善法
下行型(足→膝→腰) ランニング時の膝痛 足関節・股関節の不安定 膝内反・代償的腰椎屈曲 足関節・股関節安定化
上行型(肩→肘→手首) テニス肘 肩関節不安定or 体幹弱 肘への過負荷集中 肩・体幹の統合安定化

1.2 代償運動パターンの診断

スクワット時の代償パターン分析

観察所見 原因 組織障害リスク 矯正エクササイズ
膝内反(valgus) 大腿四頭筋 vs 臀筋バランス低下 ACL 損傷リスク ↑ Side-lying Hip Abduction
体幹前傾過剰 股関節伸展筋弱、脊椎起立筋過活動 腰椎圧迫↑ デッドリフト(ヒップドミナント)
踵上げ 足関節背屈制限 or 背屈筋弱 足関節不安定 + 膝ストレス↑ レッグプレス(踵接地強調)
ランナーの膝痛改善(チェーン分析アプローチ)

問題: 3km ランニングで膝内側痛(ITBS:腸脛靱帯症候群疑い)

チェーン分析:
① 足関節:底屈制限(ふくらはぎ硬い)
② 股関節:外旋制限 + 中臀筋弱(片足立ちで骨盤傾く)
③ 膝:結果的に内反傾向

改善プロトコル:
① ふくらはぎストレッチ 毎日 3min
② 中臀筋強化(Side Plank Hip Abduction)週3-4回
③ ランニング再開は段階的(最初は 1km、週 0.5km 増加)

4週後: 膝痛なしで 5km ランニング可能に回復

機能解剖学アプローチの 4 ステップ

  • 1. 動作観察:代償パターンを同定(ビデオ撮影推奨)
  • 2. チェーン逆算:痛みの部位から、その根本原因を上下流で探索
  • 3. 原因組織テスト:特定の筋・関節の機能評価(ROM・筋力・安定性)
  • 4. 段階的改善:最上流から段階的に矯正。改善に 4-8週要す

📝 確認テスト|機能解剖学 Ch.1:キネティックチェーン・代償・筋膜経線

全5問・正解はすぐに表示されます

Q1. 「キネティックチェーン(Kinetic Chain)」における「閉鎖連鎖(Closed Kinetic Chain: CKC)」と「開放連鎖(Open Kinetic Chain: OKC)」の違いとして正しいものはどれか?

不正解。CKCとOKCは適応・用途が異なります。

正解!CKC(例:スクワット・プッシュアップ):足・手が固定された状態で多関節が同時に働く→機能的動作・固有感覚訓練に優れる。OKC(例:レッグエクステンション・ダンベルカール):遠位端が自由→単一筋群の選択的強化・術後早期リハビリに有用。ACL術後はOKC(レッグエクステンション)の使用制限が議論されます。

不正解。パワー出力はCKC(スクワット・デッドリフト)のほうが通常大きいです。

不正解。CKCは体重負荷が可能なリハビリ段階で積極的に使用されます(膝関節術後のスクワット等)。

Q2. 「代償運動(Compensatory Movement)」において「ニービング・イン(Knee-In / Valgus Collapse)」の原因として最も重要なものはどれか?

不正解。大腿四頭筋の過剰活動はValgus Collapseの主因ではありません。

正解!Knee-In(Valgus Collapse)は①中殿筋・大殿筋弱化→股関節内転・内旋制御不全、②足関節可動域不足→距骨下関節過回内→脛骨内旋、③腸脛靭帯・TFLの短縮・過活動が組み合わさって生じます。ACL受傷・膝蓋大腿症候群・ITBSの主要リスク因子です。

不正解。ハムストリングスの短縮は膝屈曲制限に影響しますが、Valgus Collapseの主因ではありません。

不正解。足趾は関与しますが、主因は股関節外転・外旋筋群の弱化です。

Q3. 「スキャプラ・ハモキング(Scapular Dyskinesis)」の主要な原因として正しいものはどれか?

不正解。三角筋の肥大は肩甲骨運動障害の主因ではありません。

正解!肩甲骨運動障害(Scapular Dyskinesis)の最大原因は①前鋸筋弱化(肩甲骨前傾・翼状化)、②僧帽筋下部弱化(肩甲骨上方回旋不全)、③僧帽筋中部弱化(後退制御低下)です。肩甲上腕リズムの2:1比が崩れ、肩峰下スペース縮小→インピンジメントのリスクが高まります。

不正解。肘関節の過伸展と肩甲骨運動に直接的な因果関係はありません。

不正解。腰椎アライメントは姿勢全体に影響しますが、肩甲骨運動障害の直接的な主因ではありません。

Q4. 「筋膜経線(Fascial Lines / Anatomy Trains)」の概念(Thomas Myers)において「スーパーフィシャル・バック・ライン(Superficial Back Line: SBL)」に含まれる構造として正しいものはどれか?

不正解。それは「スーパーフィシャル・フロント・ライン(SFL)」の構成要素です。

正解!SBLは足底から後頭部にかけての後面連続ラインで、足底腱膜→短指屈筋→アキレス腱→腓腹筋→ハムストリングス→仙結節靭帯→脊柱起立筋→帽状腱膜を連結します。SBLの短縮は姿勢(後弯・骨盤後傾等)やハムストリングス緊張と関連します。

不正解。それはスーパーフィシャル・フロント・ラインの前面に相当します。

不正解。それは「ラテラル・ライン(Lateral Line)」の一部です。

Q5. 「グローバル安定化筋(Global Stabilizer)」と「ローカル安定化筋(Local Stabilizer)」の違いとして正しいものはどれか?

不正解。逆です。ローカル安定化筋(腹横筋・多裂筋等)が深層に、グローバル筋(腹直筋・広背筋等)が表層にあります。

正解!ローカル安定化筋(深層コア)は①脊椎分節の微細制御、②運動の予測的・先行的(Feedforward)活性化で脊椎を安定させます。グローバル筋(表層コア・四肢筋)は大きな力発揮・姿勢制御・動作に寄与します。腰痛者ではローカル筋の活性化遅延が確認されています(Hodges & Richardson, 1996)。

不正解。正常では体幹・四肢の大きな動作前に腹横筋(ローカル)が「先行活性化(Feedforward Activation)」します。グローバル筋が先行するのは腰痛・不安定性の場合に見られる代償パターンです。

不正解。ドローイン・腹横筋収縮訓練・ピラティス等でローカル筋の選択的活性化を訓練できます。
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🎯 Chapter 1 / 3
キネティックチェーン

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