三大栄養素の代謝
Macronutrient Metabolism — 消化・吸収・中間代謝経路
1. 消化器系の概要
消化は機械的消化(咀嚼・蠕動運動)と化学的消化(酵素・胆汁酸による分解)の2段階で進行する。口腔から肛門までの消化管(GI tract)の全長は約9mで、食物は通常24〜72時間かけて通過する。
| 消化器官 | 主な消化液/酵素 | 分解対象 | pH |
|---|---|---|---|
| 口腔 | 唾液アミラーゼ(プチアリン) | デンプン → マルトース | 6.5〜7.5 |
| 胃 | ペプシン・胃リパーゼ・HCl | タンパク質 → ポリペプチド / 脂肪(部分的) | 1.5〜3.5 |
| 十二指腸 | 膵液(トリプシン・キモトリプシン・膵リパーゼ・膵アミラーゼ)+ 胆汁 | タンパク質・脂肪・炭水化物すべて | 7.0〜8.5 |
| 空腸・回腸 | 刷子縁酵素(マルターゼ・ラクターゼ・スクラーゼ・ペプチダーゼ) | 二糖類 → 単糖類 / ジ・トリペプチド → 遊離AA | 7.0〜7.5 |
| 大腸 | 腸内細菌の発酵(酵素ではなく細菌の代謝) | 食物繊維 → 短鎖脂肪酸(酪酸・プロピオン酸・酢酸) | 5.5〜7.0 |
2. 炭水化物の代謝
食事由来の炭水化物は最終的にグルコース・フルクトース・ガラクトースとして吸収され、門脈経由で肝臓に達する。フルクトースとガラクトースは肝臓でグルコースまたは中間代謝物に変換される。
1. 解糖系(Glycolysis): G → ピルビン酸 → アセチルCoA → TCA回路(好気的条件)
2. グリコーゲン合成: G → G6P → G1P → UDP-G → グリコーゲン(肝臓/筋肉に貯蔵)
3. ペントースリン酸回路: G6P → リボース5P(核酸合成用)+ NADPH(脂肪合成/抗酸化用)
4. 脂肪合成(de novo lipogenesis): アセチルCoA → 脂肪酸 → トリグリセリド(過剰摂取時)
インスリン抵抗性では骨格筋のGLUT4転座が障害され、食後の血糖処理が遅延する。代償的にインスリン分泌が増加(高インスリン血症)し、最終的にβ細胞の疲弊で2型糖尿病に進展する。肝臓でのde novo lipogenesisが亢進し、脂肪肝(NAFLD)の原因にもなる。
3. 脂質の消化・吸収・代謝
食事脂質の95%はトリグリセリド(TG)であり、膵リパーゼと胆汁酸の共同作用で消化される。胆汁酸は脂肪を乳化(ミセル形成)し、リパーゼの作用面積を拡大する。
| 脂質吸収後の輸送経路 | リポタンパク質 | 主な機能 |
|---|---|---|
| 食事由来TG(腸管上皮で再合成) | カイロミクロン(CM) | 食事由来TGを末梢組織(筋肉・脂肪組織)に輸送。LPLがTGを分解しFAを放出 |
| 肝臓合成TG + コレステロール | VLDL → IDL → LDL | 内因性TGと全身のコレステロール供給。LDLはLDL受容体を介して細胞に取り込まれる |
| 末梢コレステロール回収 | HDL | 末梢組織のコレステロールを肝臓に逆輸送(RCT: Reverse Cholesterol Transport) |
- LDL(「悪玉」)は生理的に必要なコレステロール輸送体。問題はLDLの酸化と内皮下への蓄積
- small dense LDL(sdLDL)は大型浮遊LDLより動脈硬化惹起性が高い
- HDL(「善玉」)は逆輸送だけでなく抗酸化・抗炎症機能も持つ
- 中性脂肪(TG)が高値の場合、HDLが低下しやすい(代謝的に連動)
4. タンパク質代謝の概要
タンパク質は胃のペプシン、膵臓のプロテアーゼ群、小腸粘膜のペプチダーゼにより段階的にアミノ酸まで分解される。吸収後のアミノ酸は主に筋タンパク質合成(MPS)・酵素合成・ホルモン合成・核酸塩基合成に利用される。
入力: 食事由来 + 体タンパク質分解(MPB)
出力: タンパク質合成 + 酸化的分解(尿素として排泄)+ 特殊産物合成(クレアチン・セロトニン等)
N摂取量 − N排泄量 = 窒素出納。正の出納(合成>分解)は成長・筋肥大時。負の出納は飢餓・疾患・オーバートレーニング時。タンパク質6.25gあたり窒素1g(タンパク質は平均16%の窒素を含む)。
5. エネルギーバランスと三大栄養素の相互作用
| 栄養素 | エネルギー密度 | 食事誘発性熱産生(DIT/TEF) | 脂肪蓄積効率 |
|---|---|---|---|
| 炭水化物 | 4 kcal/g | 5〜10%(消化吸収代謝のコスト) | グリコーゲン貯蔵 → 満杯時にde novo lipogenesis(効率約75%) |
| タンパク質 | 4 kcal/g | 20〜30%(最も高い。アミノ酸の処理コスト大) | 過剰分は脱アミノ → 炭素骨格がTCA/糖新生に。脂肪蓄積効率は低い |
| 脂質 | 9 kcal/g | 0〜3%(ほぼ代謝コストなし) | 脂肪組織への直接貯蔵効率が最も高い(約96%) |
| アルコール | 7 kcal/g | 10〜30% | 肝臓で優先的に代謝。その間の他基質の酸化が抑制され、間接的に脂肪蓄積を促進 |
タンパク質はDIT(食事誘発性熱産生)が最も高く(20〜30%)、満腹ホルモン(GLP-1・PYY)分泌を強く刺激し、食欲を抑制する。等カロリー条件でもタンパク質比率が高い食事の方が除脂肪体重の維持に優れる。メタ解析では1.2〜1.6 g/kg/日のタンパク質摂取がカロリー制限中の筋肉保持に有効とされる。
考察問題
- 食後のインスリン分泌が脂肪酸化を抑制するメカニズムを、ホルモン感受性リパーゼ(HSL)とCPT-Iの観点から説明せよ。
- カイロミクロンとVLDLの構造・機能の違いを説明し、高TG血症の食事療法アプローチを提案せよ。
- アルコールが「空のカロリー」と呼ばれる理由を代謝経路から説明せよ。
📝 確認テスト|栄養学 Ch.1:マクロ栄養素の基礎
全5問・正解はすぐに表示されます
Q1. 糖質(炭水化物)1gあたりのエネルギー量として正しいものはどれか?
Q2. 「必須脂肪酸(EFA: Essential Fatty Acids)」として体内で合成できない脂肪酸はどれか?
Q3. 「アミノ酸スコア(Amino Acid Score)」が100に満たないタンパク質を複数組み合わせて栄養価を補完する概念はどれか?
Q4. 食事性脂質の消化・吸収において「胆汁酸(Bile Acids)」の役割として正しいものはどれか?
Q5. レジスタンストレーニング後の「筋タンパク質合成(MPS)」を最大化する食事タイミングとして最も推奨されるものはどれか?
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