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機能解剖学 MODULE 02:主要関節の運動学と運動連鎖(肩・股関節・膝・脊柱)

機能解剖学 MODULE 01では「骨・筋・関節」の概論を扱いました。本MODULE 02では、現場で最も問題になりやすい4大主要関節——肩関節(複合体)・股関節・膝関節・脊柱——の運動学(kinesiology)を深掘りします。動きを「3次元」で正しく捉える視点が、評価精度・指導品質・障害予防の差を生みます。

1. 肩関節複合体:5つの関節と肩甲胸郭リズム

「肩関節」は単一関節ではなく、5つの関節からなる複合体です。①肩甲上腕関節(GH)、②肩鎖関節(AC)、③胸鎖関節(SC)、④肩甲胸郭関節(ST)、⑤第二肩関節(肩峰下滑動部)。

肩甲胸郭リズム(Scapulohumeral Rhythm)

挙上180°のうち、上腕120°:肩甲骨60°(おおよそ2:1の比)。最初の30°は主にGH関節、それ以降に肩甲骨上方回旋が連動します。挙上局面別の主動筋:

  • 0〜30°:棘上筋・三角筋中部(GH先行期)
  • 30〜90°:上部僧帽筋・前鋸筋(肩甲骨上方回旋)
  • 90〜180°:下部僧帽筋・前鋸筋下部(肩甲骨後傾+上方回旋)

このリズムが破綻すると、肩峰下スペースが狭窄し、棘上筋腱インピンジメントが生じます。

2. 股関節:3軸×3面の運動と寛骨臼解剖

股関節は球状関節。屈曲/伸展(矢状面)、外転/内転(前額面)、外旋/内旋(水平面)の6方向と、それらの複合運動が可能です。可動域の正常値:

  • 屈曲:120° / 伸展:15〜30°
  • 外転:45° / 内転:30°
  • 外旋:45° / 内旋:35〜45°

FAI(大腿骨寛骨臼インピンジメント)の理解

近年注目される病態。Cam型(大腿骨頭の球形性低下)、Pincer型(寛骨臼の過剰被覆)、Mixed型に分類。深いスクワット制限・鼠径部痛の原因となります。

3. 膝関節:単純そうで複雑な運動学

膝は基本的にヒンジ関節ですが、屈曲時に脛骨が大腿骨に対して内旋(screw home機構の逆)し、伸展時に外旋して終末ロックされます。これがクオドリセプス・ハムストリング・腓腹筋の協調的活性化を要求します。

Q角(Quadriceps Angle)と膝障害

ASIS−膝蓋骨中心−脛骨粗面の角度。男性10〜14°、女性15〜17°。Q角増大は膝蓋骨外側偏位リスクに関連し、ランナー膝・膝蓋大腿関節症候群の主要因子です。

4. 脊柱:分節運動と運動連鎖

脊柱は7+12+5+5+4=33椎で構成。各分節の特徴的可動域:

  • 頸椎:屈伸±50°、回旋±80°(C1-2が回旋の50%担当)
  • 胸椎:屈伸40°、回旋±35°(回旋に最も寄与)
  • 腰椎:屈伸60°、回旋±5°(回旋ほぼ不可・主に屈伸)

胸椎可動性の重要性

胸椎が固いと、隣接する頸椎・腰椎・肩関節に代償が生じます。デスクワーク中心生活では胸椎後弯増強→上肢障害・腰痛のドミノ倒し。胸椎モビリゼーションが多くの臨床問題の鍵となります。

5. 運動連鎖:「動きは隣接関節を巻き込む」

Mike Boyleの「Joint-by-Joint Approach」は、各関節を「可動性中心」と「安定性中心」に分類する考え方です。

  • 足関節:可動性
  • 膝関節:安定性
  • 股関節:可動性
  • 腰椎:安定性
  • 胸椎:可動性
  • 肩甲胸郭:安定性
  • 肩関節:可動性

本来可動性を担うべき関節が固ければ、隣接の安定性関節が代償的に動き、障害を生みます。「腰が痛い人の多くは、股関節が固い」のはこの原則です。

まとめ

機能解剖学を「単一筋・単一関節」で覚えるのは初心者まで。プロは運動連鎖・3次元動作・分節間バランスで診ます。MODULE 03では、本モジュールの理解をベースに「運動制御(Motor Control)」へと進みます。

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