|

【臨床評価 MODULE 01】機能評価の基本フレームワーク ─ ROM・MMT・動作分析の統合的使い方

なぜ評価が介入に先行するのか

「評価なき介入は暴力である」という言葉がリハビリ・トレーニング界に伝わります。クライアントの現状を客観的に把握せずにプログラムを設計することは、標的を確認せずに矢を射るようなものです。本モジュールでは、トレーナー・医療従事者が共通して使える機能評価の基本フレームワークを解説します。

1. 関節可動域(ROM)評価

ROMは関節が動ける角度範囲を示します。評価には角度計(ゴニオメーター)またはスマートフォンの傾斜計アプリを使用します。

評価の種類

  • AROM(Active ROM):被検者が自力で動かせる範囲。神経筋コントロールの指標
  • PROM(Passive ROM):検者が動かした時の範囲。関節・軟部組織の可動限界
  • RROM(Resisted ROM):抵抗下での可動域。疼痛誘発部位の特定に有用

AROMとPROMの差(capsular pattern)は病態の手がかりになります。両者に制限がある場合は関節包性制限、AROMのみ制限がある場合は神経筋障害を示唆します。

2. 徒手筋力検査(MMT)

MMT(Manual Muscle Testing)はKendallらが体系化した筋力の段階評価法で、0〜5段階(またはMRC分類)で表します。

  • Grade 5(Normal):最大抵抗に抗して全可動域を動かせる
  • Grade 4(Good):中等度抵抗に抗して全可動域を動かせる
  • Grade 3(Fair):重力に抗して全可動域を動かせる
  • Grade 2(Poor):重力を除いた姿勢で全可動域を動かせる
  • Grade 1(Trace):収縮は見られるが動きは生じない
  • Grade 0(Zero):収縮なし

MMTは定性的評価であり、Grade3〜5の弁別精度には限界があります。定量的評価が必要な場合はハンドヘルドダイナモメーター(HHD)を用います。

3. 動作分析:FMS・SFMA

FMS(Functional Movement Screen)は7種類の基本動作パターンを1〜3点で評価し、合計21点のスコアを算出します(Cook, 2010)。14点以下では傷害リスクが高まるとされています(O’Connor et al., 2011)。ただし、FMSスコアと傷害リスクの関連性については批判的な研究も多く、単一指標として過信しないことが重要です。

SFMA(Selective Functional Movement Assessment)はFMSを臨床的に拡張したもので、疼痛のある患者を対象に機能的・機能不全のパターンを分類し、治療優先度を決定します。

4. 評価結果の解釈と処方への統合

評価は目的ではなく、介入設計のための手段です。ROM・MMT・動作分析の結果を統合して「問題の根本原因」を特定し、プログラムの優先事項を決定します。

  • ROM制限がある→モビリティワーク優先
  • 筋力低下が主因→漸進的筋力強化
  • 動作パターン異常→モーターコントロール訓練
  • 疼痛回避行動→痛みの神経科学教育(PNE)と段階的暴露

まとめ

機能評価は、ROM・MMT・動作分析を組み合わせることで、クライアントの機能的問題を多面的に把握できます。評価結果は常にプログラムの根拠として文書化し、再評価による変化の追跡を行うことが専門家としての標準です。

参考文献
Cook G. (2010). Movement: Functional Movement Systems. On Target Publications.
O’Connor FG, et al. (2011). USARIEM technical report. Military Medicine, 176(11), 1278–1285.

関連書籍 / cortis publishing

ストレスに強くなる筋トレ術

Amazonで詳しく見る

テーマソング / cortis music

サウナが健康に良い理由を科学的に解説する歌

cortisアカデミーで深く学ぶ

本記事で解説した内容は、cortisアカデミーで体系的に学べます。医療従事者・トレーナー向けに、最新のスポーツ医学・運動療法を月額制で提供しています。

Proプラン ¥2,980/月:全カリキュラム・論文解説
Clinicプラン ¥4,980/月:Pro特典+臨床ケーススタディ

類似投稿

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です