第5章:解剖学・運動生理学の基礎 (2/8)

第5章:解剖学・運動生理学の基礎

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Q171運動中の発汗に伴う脱水が心臓血管系に与える影響として正しいのはどれか。

A. 血漿量増加により1回拍出量が増加する
B. 血漿量低下により1回拍出量が減少し、同じ心拍出量を維持するため心拍数が上昇する
C. 体温が低下することで心拍数が低下する
D. 脱水は筋機能にのみ影響し、心臓血管系には影響しない
正答: B
脱水により血漿量が低下すると静脈還流量(前負荷)が減少し、1回拍出量が低下する。これを補償するために心拍数が増加する現象を心臓血管系ドリフト(Cardiovascular drift)という。体重の2%以上の脱水でパフォーマンスへの影響が生じ始め、特に持久系競技では問題となる。
Q172運動中に分泌が増加する抗利尿ホルモン(ADH/バソプレシン)の主な作用はどれか。

A. 腎臓での水分再吸収を促進し、尿量を減少させる
B. 腎臓での水分排泄を促進し、血漿浸透圧を低下させる
C. 汗腺からの発汗量を増加させる
D. 肝臓でのグリコーゲン分解を促進する
正答: A
ADH(抗利尿ホルモン)は視床下部で産生され下垂体後葉から分泌される。腎臓の集合管における水チャネル(アクアポリン)を増加させて水分の再吸収を促進し、尿量を減少させることで体液量を維持する。運動中の血漿浸透圧上昇や血液量減少がADH分泌の刺激となる。
Q173アルドステロンの運動中の役割として正しいのはどれか。

A. 腎臓でのナトリウム再吸収を抑制して、血圧を低下させる
B. 腎臓遠位尿細管でのNa+再吸収とK+排泄を促進し、体液量と血圧を維持する
C. 脂肪組織での脂肪分解を直接促進する
D. 肝臓での糖新生を促進して血糖値を上昇させる
正答: B
アルドステロンは副腎皮質から分泌されるミネラルコルチコイドであり、腎臓の遠位尿細管・集合管においてNa+の再吸収とK+の排泄を促進する。これにより血漿量と血圧が維持される。運動中の脱水・血圧低下がレニン-アンジオテンシン系を活性化し、最終的にアルドステロン分泌を増加させる(RAA系)。
Q174激しい運動中に筋肉内での乳酸産生が増加する際、酸塩基平衡への影響として正しいのはどれか。

A. 乳酸が直接H+を供給するため、筋内pHが低下する
B. 乳酸は中性であるため、pH変化には関与しない
C. 乳酸の蓄積はpHを上昇させ、アルカローシスを引き起こす
D. 乳酸はすぐに糖新生に利用されるため、pH変化は生じない
正答: A
解糖系の亢進によりピルビン酸と水素イオン(H+)が産生され、LDHの作用でピルビン酸はH+とともに乳酸に変換される。乳酸塩は問題ではなくH+の蓄積が筋内pHを低下させ(代謝性アシドーシス)、これが筋疲労の一因となる。重炭酸イオン(HCO3-)バッファー系がH+を緩衝し、pHを一定に保とうとする。
Q175重炭酸イオン(HCO3-)バッファーシステムの運動生理学的意義として正しいのはどれか。

A. 血液中のH+をHCO3-が中和してH2CO3を形成し、さらにH2OとCO2に分解されることでpHを維持する
B. 重炭酸イオンは筋肉内でのみ機能し、血液中には作用しない
C. 重炭酸バッファーは高強度運動では機能せず、低強度でのみ有効
D. 重炭酸イオンは腎臓のみが産生し、肺は関与しない
正答: A
H+ + HCO3- → H2CO3 → H2O + CO2 の反応により、余剰なH+が炭酸を経由してCO2と水に変換され、CO2は呼吸で排出される。これにより血液pHが維持される。この系は高強度運動での緩衝に重要であり、炭酸水素ナトリウム(重曹)のサプリメント摂取が運動パフォーマンス向上策として研究されている背景もここにある。
Q176乳酸閾値(LT)の運動生理学的定義として最も適切なのはどれか。

A. 血中乳酸濃度が初めて2mmol/Lを超える運動強度
B. 有酸素代謝だけではエネルギー需要を賄えなくなり、乳酸産生速度が除去速度を上回り始める運動強度
C. 筋グリコーゲンが完全に枯渇する強度
D. 最大心拍数の50%に相当する強度
正答: B
乳酸閾値(LT)は血中乳酸濃度が非線形的に増加し始める強度であり、乳酸産生が除去(肝臓での再利用・心筋・遅筋での酸化)を上回る点である。LTはVO2maxの割合として表され、トレーニングにより向上する。LTが高いアスリートは高い運動強度を有酸素的に維持でき、持久系競技のパフォーマンスと強く相関する。
Q177高強度有酸素運動(80〜90% VO2max)と低〜中強度運動(50〜65% VO2max)の基質利用の違いとして正しいのはどれか。

A. 高強度でも低強度でも基質利用に差はない
B. 低〜中強度では脂肪の相対的利用率が高く、高強度では糖質利用率が増加する
C. 高強度でのみ脂肪が燃焼され、低強度では糖質のみが利用される
D. 運動強度に関わらず、タンパク質が主要エネルギー源である
正答: B
運動強度が低い場合(50〜65% VO2max前後)、脂肪酸の有酸素的酸化が主な エネルギー源となる(いわゆる「脂肪燃焼ゾーン」)。強度が増すにつれ糖質(筋グリコーゲン・血糖)の利用率が増加し、LTを超えると解糖系依存が高まる。ただし絶対量での脂肪酸化は中強度(65% VO2max前後)でピークとなる(Fatmax)。
Q178加齢に伴う最大心拍数の変化として正しいのはどれか。

A. 加齢とともに最大心拍数は増加する
B. 加齢とともに最大心拍数は低下し、一般的に「220−年齢」で推定される
C. 最大心拍数は年齢に関係なく一定である
D. 30歳以降は毎年5拍/分ずつ低下する
正答: B
最大心拍数は加齢とともに低下し、年齢予測式として「220−年齢(拍/分)」が広く用いられる。ただし個人差が大きく(標準偏差±10〜12拍/分)、より正確な推定式としてTanaka式(208−0.7×年齢)も提唱されている。最大心拍数の低下は加齢に伴うVO2max低下の一因となる。
Q179加齢に伴うVO2maxの低下に関する記述として正しいのはどれか。

A. VO2maxは25歳以降、年間約1%の割合で低下するが、定期的な運動によってその速度を遅らせることができる
B. 加齢によるVO2max低下は不可逆的であり、トレーニングで改善することはできない
C. VO2maxは60歳まで一定を保ち、その後急激に低下する
D. 女性のVO2max低下は男性より速く、30歳以降に顕著になる
正答: A
VO2maxは成人以降、年間約1%(持続的な運動を行わない場合、10年で約10%)の割合で低下する。しかし定期的な有酸素運動はこの低下速度を約50%遅らせることが示されている。加齢によるVO2max低下の主因は最大心拍数の低下、筋量減少(サルコペニア)、ミトコンドリア機能低下などである。
Q180サルコペニアについての説明として正しいのはどれか。

A. 加齢に伴う体脂肪率の増加を指す
B. 加齢に伴う骨格筋量・筋力・身体機能の低下であり、特にTypeⅡ(速筋)線維の萎縮が顕著
C. 骨密度の低下を主とした骨粗鬆症の別名
D. 若年者に生じる筋線維の選択的萎縮
正答: B
サルコペニアは加齢に伴う骨格筋量・筋力・身体機能の進行性低下であり、30歳以降に年間約0.5〜1%の筋量が失われるとされる。特にTypeⅡ(速筋)線維の萎縮が顕著であり、これが転倒リスク増加や機能的自立低下の主な要因となる。レジスタンストレーニングはサルコペニアの予防・改善に最も効果的な介入法である。
Q181加齢に伴う骨密度の変化とトレーニングの効果として正しいのはどれか。

A. 骨密度は一生涯を通じて一定に維持される
B. 女性は閉経後にエストロゲン低下により骨密度が急激に低下し、レジスタンス・荷重運動が予防に有効
C. 有酸素運動(水泳・自転車)が骨密度向上に最も効果的
D. 骨密度はトレーニングでは改善できないため、薬物療法のみが有効
正答: B
骨密度は成長期に増加し、30〜35歳頃にピークに達した後、加齢とともに低下する。女性は閉経後にエストロゲン低下が起こることで骨吸収が促進され、骨密度低下が加速する(年1〜3%)。荷重を伴うレジスタンストレーニングや衝撃の大きい運動(ジョギング等)が骨形成を促進し、骨粗鬆症予防に有効である。水泳・自転車は非荷重運動であり骨密度向上効果は限定的。
Q182月経周期の卵胞期(低エストロゲン・低プロゲステロン期)にみられるトレーニングへの影響として正しいのはどれか。

A. 筋力発揮が著しく低下し、高強度トレーニングは禁忌となる
B. 相対的に筋力・パワー発揮が高く、高強度トレーニングに適しているとされる
C. 脂肪代謝が完全に停止し、糖質のみがエネルギー源となる
D. 体温が著しく低下し、持久系パフォーマンスが向上する
正答: B
月経周期の卵胞期(月経開始から排卵まで)はエストロゲンが低く、プロゲステロンもほぼゼロである。この時期は相対的に筋力・パワー発揮能力が高く、高強度のレジスタンストレーニングへの適応が良いとされる。一方、黄体期(排卵後)はプロゲステロン上昇により基礎体温が0.3〜0.5℃上昇し、持久系運動では体温調節に注意が必要となる。
Q183黄体期(高プロゲステロン期)に特徴的なトレーニングへの影響として正しいのはどれか。

A. エストロゲン高値により関節弛緩性が高まり、ACL損傷リスクが増加する
B. 基礎体温が上昇し、持久系運動での熱ストレスが増加する可能性がある
C. 筋力が最大化し、最もパフォーマンスが高い時期
D. 月経前の筋グリコーゲン貯蔵量が増加し、持久力が向上する
正答: B
黄体期はプロゲステロン高値により基礎体温が約0.3〜0.5℃上昇する。これにより持久系運動では体温調節の負担が増え、暑熱環境では熱疲労リスクが高まる。また黄体期後期(月経前)には月経前症候群(PMS)の影響でパフォーマンスが低下する場合もある。なお、ACL損傷リスクはエストロゲン高値期(排卵直前)と関連しているとされる。
Q184エストロゲンがトレーニング適応に与える影響として正しいのはどれか。

A. エストロゲンは筋たんぱく質合成を完全に阻害する
B. エストロゲンには抗炎症・筋保護作用があり、筋損傷後の回復を助ける可能性がある
C. エストロゲンはテストステロンと同一の受容体で作用する
D. エストロゲン高値は骨密度を低下させる
正答: B
エストロゲンには抗炎症作用・抗酸化作用・筋細胞保護作用があることが示されており、運動後の筋損傷を軽減し回復を促進する可能性がある。また骨形成の促進、コラーゲン合成への関与など複数の生理的役割を持つ。閉経後のエストロゲン低下が骨密度低下・サルコペニア進行と関連するため、女性のトレーニング設計においてホルモン環境の考慮が重要となる。
Q185適度な有酸素運動が免疫系に与える影響として正しいのはどれか。

A. 適度な運動は免疫機能を抑制し、感染リスクを高める
B. 適度な運動はNK細胞活性・マクロファージ機能を向上させ、免疫機能を高める
C. 運動の種類に関わらず、すべての運動は免疫系に悪影響を与える
D. 適度な運動は免疫系に全く影響を与えない
正答: B
中等度の有酸素運動(最大心拍数の50〜75%、30〜60分)は免疫細胞(NK細胞・T細胞・マクロファージ)の活性を高め、上気道感染症などのリスクを低減する。運動後には一時的な免疫応答亢進期が生じ、習慣的な適度運動により「免疫監視機能」が慢性的に向上する。
Q186過度な高強度トレーニングが免疫系に与える影響として正しいのはどれか。

A. 高強度トレーニングは常に免疫機能を高める
B. 過度な高強度トレーニングにより免疫機能が低下し、感染リスクが増加する(オープンウィンドウ現象)
C. 高強度トレーニングは免疫系に全く影響しない
D. 過度なトレーニングは腸管免疫のみを改善する
正答: B
過度な高強度・長時間トレーニング後には免疫細胞数・機能が一時的に低下する「オープンウィンドウ(open window)現象」が生じ、この期間(数時間〜72時間)は感染リスクが高まる。オーバートレーニング症候群では慢性的な免疫機能低下・コルチゾール高値・IgA分泌量低下が見られ、反復する上気道感染が特徴的なサインとなる。
Q187「J字型曲線仮説」で説明される運動量と免疫機能の関係として正しいのはどれか。

A. 運動量が増えるほど直線的に免疫機能が向上する
B. 全く運動しない場合と過剰な運動量の場合に感染リスクが高く、中等度の運動で感染リスクが最低となる
C. 過剰な運動量でのみ感染リスクが増加する
D. 運動量と免疫機能は無関係である
正答: B
Nieman(1994)が提唱したJ字型曲線仮説によると、全く運動をしない人と過剰な運動量の競技者はともに感染リスクが高く、中等度の運動習慣者が最も感染リスクが低い。この理論はPTが適切な運動量の重要性をクライアントに説明する際のエビデンスとして活用できる。
Q188運動中に主要エネルギー源として脂肪酸を利用するための条件として正しいのはどれか。

A. 嫌気的解糖系が活発に機能していること
B. 十分な酸素供給下(有酸素条件)で、運動強度が低〜中程度であること
C. 高強度インターバルトレーニング中であること
D. 筋グリコーゲンが枯渇していなければ脂肪は利用されない
正答: B
脂肪酸のβ酸化はミトコンドリアで行われる有酸素的過程であるため、十分な酸素供給と比較的低い運動強度(LT以下)が必要である。高強度運動では速い解糖と乳酸産生が優位となり、脂肪酸化の相対的割合は低下する。また空腹状態・長時間運動・カテコールアミン上昇により脂肪組織からの脂肪酸動員(リポリシス)が促進される。
Q189運動における主要な有酸素的エネルギーシステムを説明する記述として正しいのはどれか。

A. 有酸素システムはATPをPCrの分解から直接産生する
B. 有酸素システムでは解糖・クレブス回路・電子伝達系を通じて糖質・脂質・一部タンパク質からATPを産生し、最大ATP産生量が最も多い
C. 有酸素システムはCO2を消費してATPを産生する
D. 有酸素システムは10秒以内の短時間運動でのみ機能する
正答: B
有酸素系は解糖→ピルビン酸→アセチルCoA→クレブス回路→電子伝達系のプロセスを経て、グルコース1分子から最大32〜36ATPを産生する。脂肪酸はβ酸化によりアセチルCoAに変換された後、同様のルートで代謝される。産生ATP量は最大であるが産生速度が遅いため、主に持続時間の長い中〜低強度運動に貢献する。
Q190酸素負債(EPOC:運動後過剰酸素消費)の主な原因として正しいのはどれか。

A. 運動後に体温が低下するための酸素消費
B. 乳酸の除去・PCrの再合成・体温・心拍数の回復維持などのための酸素消費
C. 運動後に筋肉が成長するための酸素消費
D. 脂肪組織が分解するための酸素消費
正答: B
EPOCは運動終了後も安静時より高い酸素消費が続く現象である。速い成分(乳酸酸化・PCr再合成・体温・心拍数の回復)と遅い成分(ホルモン正常化・タンパク質代謝回転)に分けられる。高強度運動ほどEPOCの大きさと持続時間が増大し、HIITが安静時代謝を長時間高める効果はこのEPOCによる部分が大きい。

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