第5章:解剖学・運動生理学の基礎 (6/8)

第5章:解剖学・運動生理学の基礎

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Q101クレアチンリン酸(PCr)の再合成に要する時間として正しいものはどれか。

A. 約30秒で完全に回復する
B. 約50%は約30秒、完全回復には約3〜5分かかる
C. 完全回復には約20〜30分かかる
D. 一度消費されたPCrは再合成されない
正答: B
PCrは有酸素的代謝(ミトコンドリアでのATP産生)によってATPのエネルギーを使って再合成される。約50%のPCrは30秒前後で回復し、完全回復には3〜5分の休息が必要である。これが高強度インターバルトレーニングや、1RMトレーニングの休息時間(3〜5分)設定の生理学的根拠となる。
Q102乳酸(lactic acid)に関する記述で正しいものはどれか。

A. 乳酸は疲労物質であり、運動後に筋肉痛を引き起こす
B. 乳酸は解糖系の最終産物で、燃料として再利用されたり肝臓でグルコースに変換される
C. 乳酸は有酸素系でのみ産生される
D. 血中乳酸濃度は運動強度に関わらず一定である
正答: B
乳酸はピルビン酸が酸素不足の条件下または解糖速度がミトコンドリアの処理能力を超えた場合に産生される。かつて「疲労物質」とされたが、現在は①心筋・遅筋線維の燃料として直接利用、②コリ回路(Cori cycle)により肝臓でグルコースに再変換(糖新生)されることが知られている。DOMSの直接原因ではない。
Q103乳酸閾値(LT:Lactate Threshold)と換気閾値(VT:Ventilatory Threshold)の関係として正しいものはどれか。

A. LTとVTは全く異なる生理現象で相関しない
B. VTはLTとほぼ一致する運動強度で起こり、非侵襲的にLTを推定するために利用される
C. VTは常にLTよりも高い運動強度で起こる
D. LTは測定できるがVTは測定不可能である
正答: B
乳酸閾値(血中乳酸濃度の急激な上昇点)と換気閾値(換気量の非線形的増大、RERの上昇が始まる点)はほぼ同じ運動強度で起こる。乳酸増加に伴うH⁺が重炭酸緩衝系でCO₂に変換され換気刺激が増大するためである。VTは呼気ガス分析で非侵襲的に測定でき、採血なしでLTを推定する手法として活用される。
Q104運動後過剰酸素消費量(EPOC)の原因として正しくないものはどれか。

A. クレアチンリン酸の再合成
B. 乳酸の代謝(有酸素的酸化またはコリ回路)
C. 体温の低下とホルモン(カテコールアミン)レベルの正常化
D. 安静時の基礎代謝率の永続的な低下
正答: D
EPOCは運動後に安静時を超えた酸素消費が続く現象である。主な原因は①PCrの再合成(急速回復:最初の数分)、②乳酸の代謝・糖新生(遅い回復)、③体温上昇の維持・低下に伴うエネルギー消費、④カテコールアミン・コルチゾールなどのホルモンが正常化する過程での代謝亢進などである。基礎代謝率が永続的に低下するということはなく(d)、むしろ長期的にはトレーニングにより基礎代謝が向上する場合がある。
Q105低強度の長時間運動(40〜50%VO₂max)で最も主要なエネルギー基質はどれか。

A. 筋グリコーゲン
B. 血中グルコース
C. 脂肪酸(遊離脂肪酸)
D. アミノ酸
正答: C
運動強度が低い(40〜50%VO₂max程度)長時間運動では、脂肪酸の酸化が最も主要なエネルギー源となる(呼吸交換比RER≒0.7〜0.75に反映)。クロスオーバーコンセプトによれば、強度が増すにつれて炭水化物の利用割合が増加し、高強度(80〜85%VO₂max以上)では炭水化物がほぼ唯一のエネルギー源となる。
Q106有酸素系(酸化的リン酸化)でグルコース1分子から産生されるATPの概算量として最も近いものはどれか。

A. 2 ATP
B. 8 ATP
C. 30〜32 ATP(約36〜38と旧来の値も使用される)
D. 100 ATP以上
正答: C
有酸素系でグルコース1分子が完全酸化されると、解糖系(2ATP)+ピルビン酸の酸化脱炭酸(2NADH)+クレブス回路(2GTP、6NADH、2FADH₂)+電子伝達系(NADH・FADH₂の酸化的リン酸化)を通じて、現在の推定では約30〜32 ATPが産生される(旧来の教科書では36〜38と記載される場合もある)。ATP-PCr系(2〜3 ATP)・解糖系(2〜3 ATP net)と比較して圧倒的に多い。
Q107クレブス回路(TCAサイクル)が行われる場所はどれか。

A. 細胞質(cytoplasm)
B. 核(nucleus)
C. ミトコンドリア内膜
D. ミトコンドリアのマトリックス
正答: D
クレブス回路(トリカルボン酸回路、TCAサイクル)はミトコンドリアのマトリックス(内部基質)で行われる。解糖系は細胞質で起こる。電子伝達系(酸化的リン酸化)はミトコンドリア内膜で行われる。β酸化(脂肪酸の分解)もミトコンドリアマトリックスで起こる。
Q108運動中に分泌が増加するカテコールアミン(エピネフリン・ノルエピネフリン)の主な作用として正しいものはどれか。

A. 心拍数低下・血管拡張・血糖低下
B. 心拍数増加・気管支拡張・肝臓でのグリコーゲン分解促進・血糖上昇
C. 血圧低下・消化促進・瞳孔縮小
D. 成長ホルモン分泌抑制・脂肪合成促進
正答: B
エピネフリン(アドレナリン)とノルエピネフリン(ノルアドレナリン)は副腎髄質から分泌される(ノルエピネフリンは交感神経末端からも放出)。交感神経系の「fight or flight」反応を媒介し、心拍数・心収縮力増加、気管支拡張、肝臓でのグリコーゲン分解(血糖上昇)、脂肪組織でのリポリシス(脂肪分解)促進などの作用を示す。
Q109テストステロンの筋肥大への主な作用機序として正しいものはどれか。

A. 筋タンパク質合成を抑制し、分解を促進する
B. アンドロゲン受容体を介して筋タンパク質合成促進・衛星細胞活性化・GH/IGF-1分泌刺激
C. グリコーゲン合成を促進するが、タンパク質代謝には影響しない
D. 骨格筋には作用せず、主に中枢神経系に作用する
正答: B
テストステロンは筋細胞のアンドロゲン受容体に結合し、mRNA転写の活性化→筋タンパク質(特にミオシン重鎖)合成促進、衛星細胞の増殖・分化促進、そして下垂体でのGH(成長ホルモン)分泌促進→IGF-1産生増加という複数の機序で筋肥大を促す。男性でのレジスタンストレーニング効果が女性より大きい主な要因である。
Q110コルチゾールの分解代謝(カタボリック)作用として正しいものはどれか。

A. 筋タンパク質合成促進と脂肪分解抑制
B. 筋タンパク質分解促進・糖新生促進・免疫抑制・抗炎症作用
C. グリコーゲン合成促進と血糖低下
D. テストステロン産生促進と同化作用
正答: B
コルチゾール(糖質コルチコイド)は副腎皮質から分泌されるストレスホルモンで、①筋タンパク質の分解促進(アミノ酸を糖新生に供給)、②肝臓での糖新生促進(血糖上昇)、③脂肪組織でのリポリシス促進、④免疫抑制・抗炎症作用を示す。過度のトレーニングや睡眠不足で慢性的に高値になると、テストステロン/コルチゾール比が低下しオーバートレーニング状態となる。
Q111インスリン感受性と運動の関係について正しいものはどれか。

A. 有酸素運動はインスリン感受性を低下させる
B. 単回の有酸素運動でも筋肉のGLUT4発現増加・糖取り込み増大によりインスリン感受性が向上する
C. レジスタンストレーニングはインスリン感受性に影響しない
D. 運動効果は運動中のみで、運動後は直ちに消失する
正答: B
運動(有酸素・レジスタンスの両方)はGLUT4輸送体の発現増加と筋細胞膜への移動促進により、インスリン非依存的に筋肉へのグルコース取り込みを増加させる。単回の運動でインスリン感受性向上効果は24〜72時間持続する。慢性的な運動(定期的トレーニング)はさらに持続的なインスリン感受性改善をもたらし、2型糖尿病の予防・治療に有効である。
Q112エリスロポエチン(EPO)の産生部位と主な作用として正しいものはどれか。

A. 下垂体前葉で産生され、成長を促進する
B. 腎臓(主に腎皮質の傍尿細管間質細胞)で産生され、骨髄での赤血球産生を促進する
C. 副腎皮質で産生され、血圧を上昇させる
D. 肝臓で産生され、血液凝固を促進する
正答: B
EPO(エリスロポエチン)は低酸素状態(高地・貧血・腎虚血など)に応答して主に腎臓の傍尿細管間質細胞で産生されるホルモンで、骨髄に作用して赤血球の産生(造血)を促進する。これにより血中ヘモグロビン濃度と赤血球数が増加し、酸素運搬能が向上する。高地トレーニングの効果はEPOを介した赤血球増加が重要な要素である。
Q113IGF-1(インスリン様成長因子-1)の筋肥大への役割として正しいものはどれか。

A. 筋タンパク質合成を抑制する
B. mTORC1経路の活性化と衛星細胞の増殖・分化促進を介して筋肥大を誘導する
C. 脂肪合成のみを促進する
D. 骨の成長を抑制する
正答: B
IGF-1(肝臓でGHの刺激により産生)は筋細胞のIGF-1受容体に結合し、PI3K-Akt-mTORC1シグナル経路を活性化して筋タンパク質合成を促進する。また衛星細胞の活性化・増殖・筋線維への融合を促進し、筋線維数と筋線維径の増加(筋肥大)に寄与する。オートクライン/パラクライン的に局所で産生されるメカノ成長因子(MGF)もIGF-1の一形態である。
Q114肩関節の屈曲(前方挙上)に関与する主な筋として正しいものはどれか。

A. 大殿筋と大腿四頭筋
B. 三角筋前部・大胸筋鎖骨部・烏口腕筋・上腕二頭筋(長頭)
C. 棘下筋と小円筋
D. 僧帽筋中部と菱形筋
正答: B
肩関節屈曲(腕を前方・上方に挙げる)の主動筋は三角筋前部(前側)と大胸筋鎖骨部(上部)であり、烏口腕筋と上腕二頭筋長頭が協働する。肩関節伸展は三角筋後部・広背筋・大円筋が担当。棘下筋・小円筋(c)は外旋、僧帽筋中部・菱形筋(d)は肩甲骨内転を担当する。
Q115股関節の外転に主に作用する筋として正しいものはどれか。

A. 内転筋群(大内転筋・長内転筋等)
B. 中殿筋と小殿筋
C. 大殿筋と半腱様筋
D. 腸腰筋と縫工筋
正答: B
股関節外転の主動筋は中殿筋(gluteus medius)と小殿筋(gluteus minimus)である。これらは腸骨翼から大腿骨大転子に走行し、片脚立ち時の骨盤安定(トレンデレンブルグ歩行の防止)にも重要である。内転筋群(a)は股関節内転、大殿筋(c)は伸展、腸腰筋(d)は屈曲の主動筋である。
Q116膝関節の伸展に主に関与する筋として正しいものはどれか。

A. ハムストリングス(大腿二頭筋・半腱様筋・半膜様筋)
B. 腓腹筋と比目魚筋
C. 大腿四頭筋(大腿直筋・外側広筋・内側広筋・中間広筋)
D. 腸腰筋と大殿筋
正答: C
膝関節伸展の主動筋は大腿四頭筋(4つの筋が集合して膝蓋腱を通じて脛骨粗面に停止)である。大腿直筋は股関節屈曲も行う二関節筋、他の3筋(外側広筋・内側広筋・中間広筋)は単関節筋である。ハムストリングス(a)は膝屈曲・股関節伸展、腓腹筋(b)は足関節底屈・膝屈曲、腸腰筋(d)は股関節屈曲の主動筋である。
Q117手関節(橈骨手根関節)の動きとして含まれないものはどれか。

A. 掌屈(屈曲)と背屈(伸展)
B. 橈屈と尺屈
C. 回内と回外
D. 以上のうち動きとして存在しないものはない
正答: C
手関節(橈骨手根関節)は楕円関節(顆状関節)であり、①掌屈(屈曲:約80〜90°)、②背屈(伸展:約70〜80°)、③橈屈(約15〜20°)、④尺屈(約30〜40°)の4方向の動きが可能である。回内と回外は前腕(橈尺関節)の動きであり、手関節自体の動きではない(c)。
Q118ローテーターカフ(回旋筋腱板)を構成する4つの筋の正しい組み合わせはどれか。

A. 棘上筋・棘下筋・小円筋・肩甲下筋
B. 棘上筋・大円筋・三角筋・僧帽筋
C. 棘下筋・前鋸筋・小円筋・烏口腕筋
D. 肩甲下筋・広背筋・大円筋・三角筋
正答: A
ローテーターカフ(SITS筋)は棘上筋(Supraspinatus:外転の開始、関節安定)、棘下筋(Infraspinatus:外旋)、小円筋(Teres minor:外旋)、肩甲下筋(Subscapularis:内旋)の4筋で構成される。これらは肩甲上腕関節の安定(関節頭を関節窩に引き寄せる)と回旋運動に重要で、断裂は肩関節障害の主因となる。
Q119運動学習における「知識結果(KR:Knowledge of Results)」の定義として正しいものはどれか。

A. 動作遂行中のフィードバック情報
B. 動作の目標達成度に関する運動終了後の情報(外的フィードバック)
C. 筋・腱・関節からの固有受容性情報(内的フィードバック)
D. 視覚情報のみを指す
正答: B
KR(Knowledge of Results)は動作の結果(目標達成度、スコア、距離等)に関する外的フィードバックで、動作終了後に提供される。一方、KP(Knowledge of Performance)は動作の質(フォーム・テクニック)に関するフィードバックである。KRとKPはパーソナルトレーニングにおけるコーチングフィードバックの重要な要素であり、運動学習の促進に活用される。
Q120心拍数と一回拍出量の関係について、最大運動時の一般成人の心拍出量として最も近い値はどれか。

A. 5〜6 L/分
B. 10〜12 L/分
C. 20〜25 L/分
D. 50〜60 L/分
正答: C
最大運動時の心拍出量は一般成人で約20〜25 L/分である。最大心拍数約200拍/分×一回拍出量約100〜120 mLで算出される。安静時(約5 L/分)の約4〜5倍に相当する。持久的アスリート(マラソン選手等)では最大一回拍出量が著しく増大するため、最大心拍出量が35〜40 L/分以上に達することもある。

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