VBT複合トレーニングは従来法を超えるか|8週間RCTが示した『少ない量・少ない疲労で大きな効果』の実装プロトコル
「ボリュームを増やせば結果が出る」——その常識を、2025年のRCTがひっくり返した。 本記事は、BMC Sports Sci Med Rehabil(2025年10月)に掲載されたVelocity-Based Complex Training(VBCT)の8週間ランダム化比較試験を、現場のパーソナルトレーナー・S&Cコーチ向けに徹底解説する。少ない量・少ない疲労で従来法以上の伸びを引き出した実装プロトコルを、明日からのセッションに落とし込む形で示す。
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論文の概要
| タイトル | Less training, better improvement: effects of velocity-based complex training on lower-limb maximal strength and explosive performance in highly-trained volleyball athletes |
|---|---|
| 著者 | Lin G, Deng B, Li Y, Yan R, Li D, He J, Zhang X, Sun J |
| ジャーナル | BMC Sports Science, Medicine and Rehabilitation, 17(1):312 |
| 発表 | 2025年10月28日 |
| DOI / PMID | 10.1186/s13102-025-01364-3 / PMID: 41153045(オープンアクセス) |
| 研究デザイン | 3群並行ランダム化比較試験(RCT)・事前登録: ChiCTR2400093910 |
研究デザイン
広州体育大学による本RCTは、競技シーズン中の高度に訓練された男性バレーボール選手30名を対象に、3群へランダム割付した。
- VBCT群(n=10):速度ベースの複合トレーニング。スクワットの平均挙上速度をリアルタイム計測し、目標速度を下回ったらセット終了(Velocity Lossベース)
- TCT群(n=10):従来型の複合トレーニング。%1RMで負荷管理・固定レップ法
- CON群(n=10):通常練習のみのコントロール
介入は週2回×8週間。前後比較で以下の指標を測定した。
- 1RMスクワット(最大筋力)
- カウンタームーブメントジャンプ(CMJ)
- スクワットジャンプ(SJ)
- 偏心利用率(Eccentric Utilization Rate, EUR = CMJ/SJ)— 伸張-短縮サイクル能力の指標
- 立ち幅跳び(SLJ)
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主要な結果(数値で読む)
両群とも1RM・CMJ・SJ・SLJで有意な改善を示したが、VBCT群はCMJと偏心利用率(EUR)で従来法を有意に上回った。
| 指標 | VBCT効果量(η²) | TCT効果量(η²) | 群間差 |
|---|---|---|---|
| CMJ | 0.65 | 0.41 | p < 0.05 |
| EUR | 0.45 | 0.07 | p < 0.05 |
| 1RM・SJ・SLJ | 両群で同等の改善 | n.s. | |
さらに重要なのは「過程の差」である。トレーニング強度(重量設定)に群間差はなかったが、VBCT群は次の3点で従来法を下回った:
- 総トレーニングボリューム(少)
- 総レップ数(少)
- RPE(少)
かつスクワット各セットの平均求心性速度はVBCT群が有意に高かった(p < 0.01)。つまり「速い動作の質を保ったまま、量と疲労を減らして、爆発力指標で勝った」というのが本研究の核心である。
臨床への示唆:明日からの実装プロトコル
本研究の結論は、シーズン中のアスリート指導において「ボリュームを削っても、速度を担保すれば爆発力は伸びる」という運用上の指針を提供する。現場への落とし込みは以下の通り。
▶ 実装ステップ(複合トレーニング設計)
- 速度計測ツールを準備:GymAware・PUSH Band・Vitruve等のVBTデバイスでバーベル速度を可視化
- 負荷設定:1RMの70〜85%程度を目安に、選手の「目標平均速度」(例: 0.6 m/s)を事前測定
- セット終了基準:固定レップではなく「目標速度から10〜20%低下したら即セット終了」(Velocity Loss閾値)
- 複合トレーニング構造:高負荷スクワット + プライオメトリック(ボックスジャンプ等)をペアで配置
- 頻度・期間:週2回×8週間で本研究と同等の効果が期待できる
特にシーズン中・試合期のアスリート、高頻度練習でリカバリーが課題のクライアントには、本プロトコルが「練習量を削っても爆発力は落ちない」という心理的な後押しになる。
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研究の限界と注意点
- サンプル数が小さい(各群n=10):結果の一般化には追試が必要
- 対象が男性バレーボール選手のみ:女性・他競技・一般トレーニーへの適用は要検証
- 介入期間8週間:長期(半年以上)での比較データなし
- 1RM・SJ・SLJで群間差なし:「VBTが万能で優れている」のではなく「爆発力指標(CMJ・EUR)で優位、最大筋力では同等」が正確な解釈
- VBT機器の費用:導入には10万〜30万円のコストが発生(GymAware等)
cortisアカデミーの見解
本研究は、cortisアカデミーが推奨する「目的指標を絞り、最小有効量で最大効果を狙う」というプログラミング哲学と完全に一致する。VBTは単なる流行の技術ではなく、「定量的フィードバックに基づく内的負荷管理」の実装手段として位置づけるべきだ。
特にパーソナルトレーナーが取り入れるべきポイントは2つ:
- RPE管理の精度向上:VBTがなくても「速度の主観的低下」を毎セット観察し、20%低下時点でセット終了するだけでも効果は近づく
- ピリオダイゼーションの再設計:シーズン中・繁忙期のクライアントに「量を減らして強度と速度を保つ」フェーズを4〜8週間挿入する
参考文献
- Lin G, et al. Less training, better improvement: effects of velocity-based complex training on lower-limb maximal strength and explosive performance in highly-trained volleyball athletes. BMC Sports Sci Med Rehabil. 2025;17(1):312. doi:10.1186/s13102-025-01364-3
- Gonzalez-Badillo JJ, et al. Velocity loss as an indicator of neuromuscular fatigue during resistance training. Med Sci Sports Exerc. 2011.
- Pareja-Blanco F, et al. Effects of velocity loss during resistance training on athletic performance. Scand J Med Sci Sports. 2017.
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